海苔がうまい

所用の帰りに和菓子屋に寄って買った団子2本を夕方に食べ、では夕飯はどうしよう。夫(仮)はアルコールを飲まない。夕飯時の飲食店は酒ありきの店舗がほとんどで、いつもはラーメンを食べることが多いけれど、今日は既に昼にラーメンを食べた。漠然と寿司かなと目星をつけてとにかく家を出てみる。

目当ての寿司屋は何組か待っているお客さんがいたけれど、他にこれだという選択肢もなかったので列に並んだ。我々は飲食店の列に並ぶとき、「待っていればいずれ食えるから」を合言葉のように言い合って頷く。

順番が回ってくるのを待つ間に壁に貼られた寿司ネタとその金額を眺める。ウニ一貫600円。ふらりと来るには豪華すぎたかもしれないと一瞬不安がよぎったので、食べるからには皿の値段など気にせず、食べたいものを食べるのが最善、と心を強く持ち直す。

カウンターに着き、日本酒を注文した。家を出る前は、アルコールを飲まない場合に夕飯をとるための飲食店として寿司屋を選択したつもりだったはずが、私は寿司を目の前にして日本酒に屈した。飲酒を制する人間がいるわけでもないのに、なぜか「頼んでしまった」という後ろめたさがわく。

寿司は軍艦が、特に海苔が美味しかった。寿司を食べてあんなに海苔をほめたのははじめてだった。

我々の席の前で寿司を握る板前は、手が空くといくつかの寿司ネタを薦めてくる。イカミミ、カマス。どちらもうまいうまいと頂くと、食べっぷりが良かったと帰り際ににこにこ褒めてくれた。